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人材採用にもマーケティング戦略を。“採用マーケ”の基礎

はじめに

「求人を出しても応募が集まらない」「良い人材を採用しても定着・活躍に繋がらない」ーーこんな採用のお悩みを抱える企業は少なくありません。
採用活動を“採用広告を出す/面接を回す”という手段レベルで捉えてしまうと、母集団形成・選考・入社後活躍という流れの中で“成果”に至る確立が低くなってしまいます。
そこで注目すべきなのが、マーケティングの視点を採用活動に応用する「採用マーケティング(以下、“採用マーケ”)」です。つまり、人材を「ターゲットとして惹きつけ、動かし、定着・活躍に繋げる」ための戦略設計を、マーケティング的な考え方・構造で整えるということです。
本記事では、「なぜ採用にマーケティング戦略が必要なのか」「採用マーケの基礎となる考え方」「採用マーケを現場で動かすための実践ステップ」を整理します。


1.背景/なぜ今、“採用マーケ”が求められているか?

まず、なぜ採用にマーケティングの視点を取り入れる必要があるかを、環境変化・企業課題の観点から整理します。

  • 人材流動化・求職者の価値観変化:かつては「働ける場所を探す」という姿勢が主流でしたが、近年は「どこで働くか」「何を成し遂げたいか」「自分の価値観と会社の価値観が合っているか」を重視する傾向が高まっています。
  • 母集団競争の激化・採用難の常態化:多くの企業が採用市場で“いい人材”を確保するために動いており、求人広告料や選考施策だけでは差別化が難しくなっています。
  • 定着率・活躍率の低迷:採用しても「すぐ辞める」「期待通り活躍しない」といった課題が多く、採用活動を“数を揃える”だけで終わらせず、入社後の成果まで視野に入れる仕組みが必要です。
  • 手続き的な採用から戦略的な採用へ:求人掲載→応募→面接→内定という流れだけではなく、その前の「選ばれる理由」「応募者を惹きつける魅力設計」。

このような背景のもと、採用マーケティングを取り入れた設計が、採用成果を向上させ、企業成長を支える鍵になっています。


2.採用マーケの基礎となる3つの考え方

採用活動においてマーケティング視点を持つために、特に押さえておくべき考え方を3つ整理します。

考え方①:ターゲット人材を「顧客」として捉える

通常マーケティングで言う「顧客」ではなく、採用においては「入社してほしい人材」がターゲットです。

  • その人材がどんな背景・価値観・キャリア志向を持っているかを詳細に設計(=ペルソナ設計)する。
  • 求職者から見て「この会社で働きたい」「この仕事を通じて自分が成長できる/価値を出せる」と思ってもらえる魅力・選ばれる理由を設計する。

考え方②:魅力訴求→動機喚起の流れを設計する

マーケティングでは「認知→興味→比較→購入」という流れがあります。採用マーケでも同様に「認知(求人を知る)→興味(応募したいと思う)→比較(他社と比較)→応募/入社」という流れを設計します。

  • 求職者が動くきっかけを設計:ブランド・文化・仕事内容・成長機会・社風など、魅力的に訴求する。
  • 応募→面接→内定の各段階で「この会社を選びたい理由」「入社後に活躍できるという期待」を強めるコンテンツ・接点設計を行う。

考え方③:入社後も「顧客(社員)化」/「ファン化」する設計を持つ

採用マーケは単に採用することだけを目指すのではなく、入社後も活躍・定着・貢献してもらうまでを視野に入れた設計が必要です。

  • 入社後フォローアップ・OJT・キャリアパス・社内文化浸透などを設計し、社員が「この会社に入って良かった」「ずっといたい」と思える構造を作る。
  • 社員が会社の「ファン」になれば、紹介採用・社外発信・推薦という拡張チャネルになり得ます。

3.採用マーケを実施するための4ステップ

では、採用マーケを現場で動かすためのステップを紹介します。

ステップ①:ターゲット人材と魅力訴求ポイント

  • 採用したい人物像(年齢/経験/価値観/志向)を明確に設計。
  • その人材が「この会社で働くことで何が得られるか」「この会社に入る意味は何か」を言語化。
  • 魅力訴求ポイント(社風/成長環境/働きがい/価値観合致など)を整理し、求人内容・採用サイト・面接シナリオ。

ステップ②:応募経路・接点・コミュニケーション設計を行う

  • 求職者が接触するチャネル(求人媒体/SNS/採用イベント/紹介)を設計し、ターゲット人材に合ったチャネル選定を行う。
  • 求人掲載・採用サイト・説明会・面接・オファープロセスなど、各段階で「会社の魅力」「入社の意味」「自分の成長ビジョン」が伝わるようメッセージ・体験を設計。
  • 応募から面接、内定、入社までの「動き」を可視化し、候補者にとってスムーズで興味・期待が高まるプロセスを整備。

  • 入社前から入社後までの実体験(オンボーディング/OJT/メンター制度/キャリアパス紹介など)を設計し、入社後の活躍・定着を支援。
  • 社員から「この会社に入って良かった」「この会社を人に勧めたい」という発信が出るような仕組みを検討。
    例:社員紹介制度/社内文化共有/社外発信支援。
  • 募集〜入社〜活躍と言う長い流れをKPI化:応募数だけでなく、内定辞退率/入社後1年離職率/活躍社員数/紹介応募数などを設定。

ステップ④:振り返り・改善・拡張サイクル

  • 採用マーケの成果指標(応募数/面接通過率/入社率/定着率)を定期的レビュー。
  • 採用した人材の活躍・定着実績から「どう魅力訴求が効いたか」「どの接点で離脱が起きているか」を分析。
  • 成功モデルを抽出し、次回募集や採用チャネル・メッセージに反映。
  • 社内で採用マーケの知見・成功パターンを共有・仕組み化し、採用活動を“広告運用的”ではなく“マーケティング運用的”にアップデートする。

4.まとめ

採用活動は、もはや「求人を出して待つ」だけでは十分ではありません。求職者の価値観変化や競争の激化という環境下では、マーケティングの考え方を取り入れた“採用マーケ”が、優れた人材確保・定着・活躍という成果を生む鍵となります。
本記事で整理した基礎(①ターゲット人材を明確に/②魅力訴求〜応募動機設計を行う/②入社後も見据えた定着設計を持つ)をベースに、実践ステップに沿って少しずつ改革を進めてください。限られたリソースの中でも、採用戦略をマーケティング構造に設計し直すことで、競争優位を築くことが可能です。
ぜひ、次回の採用活動では「人材を“集める”のではなく、“惹きつけ・動かし・育てる”」という視点を起点に、採用マーケをスタートしてみてください。


執筆:株式会社SHIKI JAPAN 取締役 / COO 瀬戸郁哉
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